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May July




August

『橘まだうちにいる?』『いるけど』『米炊くの忘れた。セットしといてくんない?』『わかった』『よろしく。あ、三合炊いといて』『カレー?』『あたり。じゃあよろしく』



「佳明、紙飛行機つくれる?」「つくれる。何で?」「今日気がついたんだけど、俺つくれないんだよ。ちょっとびっくりした」「……今からつくる?」「つくる!飛ばす?」「いいぜ。競争な」「賭けないならな……」



「エンドレス野球拳しようぜ」「エンドレス……?」「全部脱がされたらこれを着ていく」「や、だ……やだ。だってお前そういうとき、ばかみたいに強いじゃん……!」「やるかやらないかじゃんけんな。そら、じゃーんけーん」「あ、あ!」



「橘、そんなに入んないよ」「ん、加減がわかんない」「ちょっとでいいんだって。…そうそう。あ、力入れ過ぎだって」「簡単そうに見えたのになぁ」「慣れだよ慣れ」「佳明はよくつくんの?」「父さんが餃子つくるときはなぜかキャベツ二玉分とかつくるんだよ…」「業者じゃん」



「レンタルの期限いつまでだっけ」「さあ、まだ大丈夫じゃない?」「そっか。……あ、のさ」「なあに」「や、何ってことは、ない、です」「うん」「うん、そうなんだけどさ、なぁよしあきぃ!」「日本語が不自由だね橘クン」「わかってんだろお前……!」「橘が言うまでわかんない」



「だあいすきな俺がいなくなっちゃったら、どうすんの、橘クン」濡れたうなじに頬を寄せて、ぬるい熱に浸かった体躯を抱き締めながら口にしてみる。すっかり湯にとろけてくつろいでいた体はたちまち強張って固くなった。「や、だ。やだ、だめ」ゆるい拘束から抜け出した橘が、くるりと反転して手を伸ばしてくる。ざぱりと波がたった。海みたい。全部を押し流して世界をないものにしたことのある海。抱き留めて、捕まえ直してやる。骨と骨とが、がりとぶつかって、ちょっと笑いそうになった。「あがったらさ、かき氷しようぜ。シロップないから砂糖水で」 肩に乗った滴を舐めとる。その横で、小さくうなずいたのがわかった。



好きも愛してるも俺のもので、それが当然な気がしていました。改めて、お前の毎日に俺を置いてくれると、こんなにも、嬉しい。



指は細く頼りないくせに、したたかな手つきで橘は俺の唇に触れる。果物の露が乗ったままで、いくらかべたついている。口に含もうとすると、だめだよ、と言うようにぴたりと指先を押し付けられた。



「橘、すぐ泣いちゃうね」「お前、油なんだよ。他じゃ、こんな、涙腺ゆるくなんない」「あ、こら、あんまりこすったら赤くなる。いいよ、無理に止めなくて」「ん、ごめん」「いくらでも泣けよ。お前の泣き顔、好きだよ」



「コロッケ行進曲って知ってる?」「知ってる知ってる。カレーつくるやつだろ?」「コロッケだっつってんじゃん!」



「橘重いよ」「そこで喋んなよ。くすぐったい。あー、あったかくってやーらかくって、寝そう」「待て待て。潰れるって。ベッド行きなさい」「んー」「せめてよだれ垂らすなよ」「んー……」「まじかよ、なあってば」



お前んとこのが、ちょっとだけ進度早いんだよ、と言って佳明は頻繁にノートを借りていく。はい、と手渡すのにも慣れてしまった。はらとページをめくったときに、ノートの隅に書き加えられている、佳明の声を見つけるのにも、慣れてしまって。少し歪で、淡い線。ささやいてるみたい。乾いたやり取りを交換ノートみたいだと笑うこともしなくなった。ごっこ遊びは危うくて、やめられない。不和とか、違和とか、俺には少し難しいし、恐ろしい。鞄から取り出したノートの手触りが、いつもと違ったことにおや、と思う。「……間違えてんじゃん、ばか」 ページをめくる。筆圧が薄くて、とぼやく佳明の字が途切れそうに続く。誰かの名前、いつかの悲劇にまぎれて、俺を呼ぶ声がひとつ。周りよりもいくらか濃く書きつづられた俺の名前。白い紙を傷のようにひっかいた黒鉛が、ついでに、俺のこともひっかいていく。ぼんやりと頬杖をついて、ペンを走らせる佳明の、退屈そうな横顔を思い浮かべてしまう。言葉にする気のなかった声が、俺を呼ぶ。知らないお前がいる。俺に宛てたつもりはなかったんだろう。あてどなくさ迷うはずだったそれを、見つけてしまったよ。ず、と心臓が裏返ろうとする。ごめん、あとでこの範囲のノート貸すから、と胸の内でわびて、そのページを破り取った。



「寝てんの?」「寝て、ない」「泣いてんの?」「泣いてない。嬉しそうに聞くなよ」「ごめん。な、生きてる?」「お陰さまで」



けものに自分の名前を教えこませるみたいに、理解しやすいものから順に剥いでいく。もう眠たいと嘘をついたお前。足りないだろ、何もかも。



お前だけ、お前しか、お前なら。どれがお好み?



「なんで同じ学校じゃないんだよ。そしたら四六時中一緒にいられるし、お前が誰かと話してたら割り込めるし、課題も予習も写してくのに」「まさかまだ終わってねえの?」「.……黙秘権」「橘」「夏目漱石が猫じゃなかったら話はもうちょっと単純だった」「一応言うけど猫じゃないからな」「うん、わかってる」



「うち明日から学校なんだよ。行きたくない……。何かがどうにかなって倒壊しないかなー」「てっきとうだなあ。どうにかって。理由くらい考えといてやれよ」「じゃあ爆発」「バスガス爆発。はい早口で」「ばすがすびゃ」「びゃ?」「お前が爆発しろ。あー、やだやだ」



緩慢に愛して。なぶり殺して。最期が長いように。お前だけ、の瞬間が永遠じみてくように。



それでも欺くなら、こっちで本当にするから。無謀に信じはじめるから。俺に見えるお前が、お前だってことにするから。それでいいかな。



嘘はつかないでほしい。その他のお前の言葉まで、ひとつひとつ疑うことはしたくないから。



「え、もう決まった? 今日早いな」「お前がいっつも早すぎなんだよ」「自己の理解が深いんだよ」「同じものしか買わないだけだろ。お前あれだろ、幼稚園の頃、メロンパンになりたいーとか言ってたんだろ」「食パンの方がいいな」「なんだっていいよ!」



「お前を離さないってことだけは、俺の絶対の自信だから」



どうしようもなくお前が好きな俺と、取り返しがつかないくらい俺が好きなお前、都合がいいじゃないか。



日常の色は、昨日より今日の方がいくらか残酷で、結んだつもりの糸もほどける。だから肌と肌。何も挟まない距離で約束したい。



やわらかい愛だけでお前を包んでやろうと言ってみても、猫みたいな目が金色になる。擦り傷だらけ、かさぶただらけの方が、いいの。お前、それは、劣情と言うんだ。



「行かないで、って言いたいの、いつも我慢してるだろ。そういうお前の救いようのないとこ、嫌いじゃないよ。橘のことで、嫌なことなんて、何もない」
軍パロ



自分が帰らなかった世界のことなんて、考えたこともないんだろ。傲慢と、無関心と。空はそんなにいいところか。忘れるなよ、土の上に俺がいること。忘れてくれるな、頼むから。
軍パロ



「俺のこと好きっつったじゃん。嘘じゃないだろ。ほんとだったろ。今更何で、そんなこと言うんだよ」



「佳明、アイロンってどこ」「アイロン? 何で」「洗濯終わってたから干しちゃったんだけど、お父さんのシャツがあったから」「俺のシャツもアイロンがけしてよ、毎日」「プロポーズ?」「そうとってくれて一向に構わない」



「縛っていい?」「……5W1H」「俺がお前を、縛りたい。今すぐにでも、どこででも、えーと、したいから。あ、痛くしたい」



「飲んだ? れぇってして」「え」「ん、いい子」



「……ノストラダムス級の絶望」「大袈裟過ぎね?」「だって今日は4限目んときから、ローソンで甘いのって決めてたのに。昼飯の前からだぜ? 思い募ってんだぜ? 全部売り切れとか、くっそ、サンクスに浮気してやる……」「サンクスにロールケーキあったっけ」「そこだよなー! ああもう信じらんね!」



「好きだったら何してもいいと思ってんの」「いいだろ。傷つけても踏み躙っても。お前は許してくれるんだろ。愛してるから」「……っ」「俺も愛してる」



「言葉の真偽なんて本人にしかわかんないんだよ。俺が本当のことを言ってるって誰が保障できる? 誰にもできないだろ。橘、お前にもわかんなかっただろ」



「だって俺に関係ないじゃん。兎とか金魚とか、どうせあいつら人の区別どころか認識さえしてねえよ。そんなん泣けるかよ」



「8月8日」「うん?」「今日はハグの日です」「ああ、そう」「こんな暑苦しい日に何言ってんだって話だよな」「そんなこと言っちゃってさ、かこつけてぎゅうぎゅうしたいくせに」「かこつけなくてもぎゅうぎゅうしたい」



「橘眠そう」「眠い、かも。コーヒー飲んできていい?」「何でだよ、寝ろよ」「泊まれるの久しぶりなのに。もったいない...…」「俺も寝るから、ほら来いよ」「やだ……」「やだじゃねえよおら寝ろ!」



お前がくれる愛はたぶんとても手触りがよくて。泣いたまま滲みそうになって、それから…それから? ああもう面倒だ。愛は愛だよ。お前を愛してる。それだけ。



相対的に愛してるんじゃないよ、そんなところにお前を置いてやることなんて、とてもできない。世界のはじめに神さまをはめ込んだようには。絶対的にお前を愛してる。



「ポッキーゲームしようぜ!」「今ポテチ食べてるから。味が混ざるから後でにしよう」「今、今すぐしよう、じゃがりこならいいだろ?」「何味?」「梅」「まじか。サラダとチーズの二択のつもりで聞いたのに」



「なに見てんだよ」「食べたいなー、って、思って」「しかたねえなー、ほら一口」「や、そっちじゃなくて」



「一緒のシャンプー使っても、匂いは違うんだよなー」「……橘それ楽しい? わしゃわしゃーって」「うん。あー……佳明の匂いだー」「ちょっと橘くんこっちきなさい」「やぁーだ」「俺もお前に触りたい」「わしゃわしゃする?」「する。超する」「後でな」「殺生な!」



「最近お前ずっとうちで風呂入ってんのに、同じ匂いになんないよなー」「そこですはーってしないで」「橘は橘の匂いだよね。いい匂い。好き」「や、めろって。嗅ぐな……!」



「なぁなぁ白と黒どっちにしよう!」「俺だったら黒だけど。橘前に電化製品は基本白が好きっつってたじゃん」「そうだけど黒は後ろがつるつるじゃないんだよ。剥げなさそうじゃん。決まんねーよー」「ドコモって制服今いちだよなー」「飽きんなよ!」



「佳明さぁ、男の体触ったり、あー……突っ込んだりして、楽しい?」「興奮するし、たまんないよ? いつもたってんじゃん」「無理してない?」「何何、気にしちゃってんの。かっわいいねー橘くんは」「あほ! 聞かなきゃよかった……」



「その恐怖心をどうにかしてやろう」「任せた」「……あー……昨日もお前のことが好きでした」「足んない」「昨日は好きでした、今日はもっと好きです?」「そもそも過去形がだめなんだな」「めんどくせえ。四六時中愛してる!」「投げんなよ! 愛してんのは俺もだけど!」



「俺のこと好き? 間違いなく好き?」「好きだよ。今日は何ろくでもないこと考えてんの」「……お前に嫌いって言われたらどうしようって思ってたけど、もっと怖い言葉があるって気がついて」「何」「好きだった」「……っ、ホラーだなぁ」「だろ、だろ」



「今日このまま寝たいから、つけてしてくんない?」「あー……今切らしてんだよね。……やめる?」「……」「たーちばな」「もっかいシャワー浴びる」「お前ときどきびっくりするくらい自分に正直だよな」「うるさい」



「怒ってる?」「怒ってない」「怒ってんじゃん」「別に怒ってない」「だから怒ってんだろ!」「怒ってないっつってんじゃん!」



「じゃあ俺はもう佳明のいないところで楽しそうにしないから。笑わない、から。そしたら一緒にいてくれる? なあどうしたらいい、どうしたら」



お前の時間を俺にちょうだい、と橘が笑って言う。手首に巻いたままだった時計をするりと外されて、携帯電話も取り上げられた。壁掛け時計もいつの間にか外されている。「あとで戻しとけよ」「あとでな。今は、今」「で、何すればいいの」「何も。ただ、俺と一緒にいてくれればいいんだよ」時間を忘れて? ばかなことをするやつだ。くるくると時計を弄ぶ橘は、いたずらを企む子供よりは、叱られることに怯えている子供のように見えた。「だって。お前は全部俺のだってのに、ときどき、くれないときがあるから。たまには時間くらいもらったっていいだろ。俺、佳明のこと好きなんだぜ、知ってんのかよ」「知ってるよ、痛いくらい。比喩じゃなく」「お互い様!なあ愛してるよ」「泣くなよ」「泣かせるなよ、ばーか」



正しさをください。愛より、愛より。なんて、思ってもないことを口にして、大人になった気になって。お前を傷つける俺になる。それは少し平和に近くて、自分の首を締めあげたくなる。



お前が好きなものを、お前と同じように好きになることはできない。それは悲しいことでも苦しいことでもないはずなのに、お前が、どうしてって言うから、俺は、
きのこの山、の話



幸せにしてやりたいより、幸せになりたいより、幸せって何だろうが先にくる。俺には、お前でなくて、それが少し寂しい。



いらいらしていれば、しているほど、佳明の指先は優しくなる。何がまずかったのかな、とぼんやり今日あったことを思い返していると、余所事を考えるなと首筋を撫であげられた。



「お前、俺を監禁したいってたまに言うけど、そうしてどうすんの」「とりあえず、食事は全部手ずから食べさせてやるよ」「手ずから?」「手ずから」「…手掴み?」「珍しく察しがいいじゃん」「わー、うれしー」「見事なまでに棒読みですね」



「そう言われたわけじゃないけど。何となく、気づいちゃった、っていうか。そういうのなんだけど。たぶん、母さんは、子供を一人しかもたないつもりで、それで、ほんとは女の子がほしかったんだろうな、って」
 くぐもった声を、考え過ぎだろ、と遮ってやることができなかった。お前の全部を否定したくなかった。でもそうしたら、お前がつくったお前の傷を、見えないように覆ってやることもできない。何もできない。ただ、髪をすく手を止めないで、昇っていく泡粒みたいな言葉を聞いてやることしか。
「だって、二人目を考えてたら『由佳』はとっておくだろ。どっちでもいいなら、男の名前も用意しておくだろ。選択肢に、あげないだろ。俺…俺、は、はじめから、一番はじめっから、母さんの思う俺じゃ、なくて」
そんなのって、ない、と言葉の終わりをぐしゃりと握りつぶしてしまった橘を、俺は守ってやりたくて救ってやりたくて、でも、息の根を止めてしまいたい、とも思う。だから傷は傷のまま倦んでいく。ごめん。でもお前も、それでいいって言ってくれるだろうから。



「小さい頃は嫌いだったけど、今は好きなものってあるよなー」「コーヒーとか辛いものとか?」「ミントとか?」「橘今だってサクマ式のハッカ食べないじゃん」「お前もだろ。あれ意味わかんないよな」「でも入ってなかったらやだなぁ」「それはわかる」



July

「前に聞いたんだけど、俺の名前『由佳』になるとこだったんだって。そしたらお前と一緒だったのにな」「俺橘って名前好きだよ」「俺も好きだけどさ」「じゃあいいじゃん、なー橘クン」「ん」



「俺の『好き』は安くないよ」「言うわりには大安売りしてるけど」「佳明はいいんだよ。好き、好き、だぁい好き。お前が好き、佳明だけが好き」



鼓動も呼吸も自由にならない。自分でも知らないところで動くものを、人に贈るなんてできるわけがない。それでも、できることなら、血の巡りから何から、お前に渡してしまいたいよ。世迷言だ、忘れて。



「かわいいよなぁ。俺動物嫌いだけど」「触るの平気じゃん」「ちょっと構うだけならいいんだよ。いきものの面倒見るなんて、無理だ、だめだ、そんなの。責任負えない。だったら嫌いがいい」「…...そら、肉球」「ああもう! お前らこんなかわいくなかったらなぁ!」



「あ、にゃんこ」「にゃんこって言うなよ。かわいこぶんなよ、かわいいだろ」



「絶対病気になんかならないで。手術とかしないで」「傷ができるから?」「それもだけど。輸血するじゃん。お前の血に、誰かの血が混ざるなんて、そんなの許さない。お前の全部、俺のなのに」



呼吸はどこへやった。一定のリズムのまま、あまり長く水の音が続くものだから、死んでるんじゃないかと、思った。ぞくり。「橘」脱衣場から声をかける。「生きてるよ。あと、寝てもいないから」
いつか続くかも。



お前を好きでいる俺なら、好きになってやれる、かもしれない。お前が好きだっていう俺のことなら、好きにはなれなくても投げ捨てたくはない。そうしてお前は縛るんだ。橘、って呼んで、愛してるなんて言ってのけて。離すなよ、好きだ。



「た、ちばな、そこで喋んな……っ」「何で?」「……っ、楽しそうだな」「すっげえ楽しいよ?」「あとで泣かそうと思ったけど、やめた、今泣かす」「え? あ、っう、あ……!」



「あ、え、なん、で……っ」「橘がいやだとかやめろとか言うから」「……っ、いつもやめないくせに!」「今日は労わってやろうと思って」「ばっかじゃ、ないの」「どうしてほしい?」「……っ」「橘?」「……っあ。う……」「頑固だなあ」



「女子になりたい」「唐突」「今日カエルの解剖だったんだよ。あいつらずるいんだ。きゃーって言えば許されると思ってるんだ。何の罪もないのに寝てる間に切り裂かれるカエルに謝れ。失礼だ。……ああもう、女子になりたい」「そこでカエル絶滅しろって言わないお前が好きだよ」



「ああもう何やってんだよ、お前は俺のなんだから大事にしろって言っただろ!」「怒ってる?」「怒ってるよ!」「ごめん……」



「海行きたい」「プールの授業出てないくせに」「誰のせいだよ誰の」「恋人の我儘きくのは男の甲斐性だろ」「恋人? 人? お前なんか犬だよ犬。がぶがぶ噛みつきやがって」「じゃあ言いますけどその犬に、」「ストップ。その先おてんとさまの下で言えること?」「言えないこと」「よし黙ろう」



「暑いな。アスファルトで目玉焼きつくれそう」「無理だろ」「ものの例え」「はいはい。夕飯、辛いのと冷たいのとどっちがいい?」「辛いの!」「じゃあスーパー寄ってこう。野菜売場で涼もう」「さんせーい」



お前は俺のかみさまだから、と佳明が言う。投げ出した腕に頬を埋めているから、声はくぐもっている。今にも割れそうな午後だ。「どうやったら殉教できる?」ばかなやつだ。「ずっと俺を愛してくれればいいよ」



「うわああ佳明大好きだー」「何。え、急に、どうした」「なんでもない。唐突に思った。いや、いつもなんだけど」「わざわざ言わなくても知ってる」「でも言いたい」「うん、言ってほしい」「好き好き好き愛してるー」「一休さん……」



「お前に会うために生まれてきた、って言ったら引く?」「引かない。けど、それちょっと違う。一緒に生きるためだろ? 俺会っただけじゃ足んない。もう、全然足りない」「じゃあ一緒にいる」「ずっと?」「ずっと」



「キスするときにはさぁ、月は出てない方がいいよなぁ」「何それ」「月が頭の上にあるんだって、中原中也が。知ってる?」「知らない。読んでよ」「いくらで?」「じゃあキスひとつ」「いいよ」



愛されたから愛したんじゃないよ、そこんとこ、履き違えないでください。



「俺、女の子と付き合ってたことあるよ」「うん」「たぶん、これからだって、誰か女の子に好きになってもらうことはできると思う。あ、ちょっと、ちゃんと聞けよ。たぶんの話に嫉妬すんな」「わかった頑張る」「男女の恋愛は普通じゃん。何の障害もないじゃん。でも俺とお前は違うだろ。それでもお前は俺を好きになってくれた。後にも先にもお前一人だよ、お前だけだよ、きっと」「話終わった?」「終わった」「キスしていい?」「お前……」「だって俺だって同じことだろ」「……うん、そうだな」



風になりたい、と光になりたい、だったら、どっちの方が欲深いだろう。やはり光か。と、着地するあてのない思考をふわふわと泳がせたあとで、その人を見た。目があっても微笑まれることはなくて、それどころか、軽く睨みつけられて。やはり俺は俺でいいと思った。



「りあじゅう、って、何」「何それ」「知らない。今日メールしてたら言われた」「どんなメール?」「お前に送ったやつ」「いつもと同じやつじゃん」「うん」「何だろうなー」



「私のお墓の前で泣かないでください」「待って。それ絶対なし」「何で」「俺より先に死ぬとかなんなの。だめ、耐えらんない、俺が先」「俺だってやだよ。って、え、橘?」「お前が死ぬと思ったら悲しくなってきた……」「俺たちいくつだよ。ああもう泣くなよ!」「泣いてねえよ!」

「まぁ、真面目な話、長生きしてください。できれば長く、一緒にいたい、ので」「珍しく殊勝ですね橘くん」「きもいとか言うなよ」「言わない。どんなお前でも好き」



「今日郵便局に行ったんだ」「うん」「お前俺に手紙くれたことないね?」「うん。欲しいの?」「もらってももったいなくて読めない」「そういうこと言うから絶対書かねえ」



「傷だらけだな。せっかくきれいな肌なのに」「半分以上お前のせいだけどな」「知ってる。でも許してるお前だって悪いんだ。もっとまともなやつ好きになればよかったのにな?」「お前じゃなきゃやだ」



 シーツの上に転がったボトルを引き寄せて、ぱきりとキャップを外す。白いプラスチックに唇を触れさせる。喉を灼きながら落ちていく炭酸水はちりりと痛くて、いくらも飲むことができなかった。それでも、唇を舌の先でなぞって、ひと心地ついたつもりになる。その動作のひとつひとつに、佳明の視線が注がれているのがわかった。舐めるみたいな噛みつくみたいな。さんざん好き勝手して、たった一晩明けただけだっていうのに。この馬鹿犬、とせせら笑ってやると、わかっているのかいないのか、佳明の口元がひくりと歪んだ。
「飲む?」
「飲む」
「間接キスだ」
「今更そんなこと気にすんの」
「気にする。知らなかった? 慣れなんて、ねえの。毎日お前にどきどきしてんの」
 上向いてペットボトルに口をつけていた佳明が盛大にむせた。ばーか、と笑うと、口元を拭いながらこっちを睨んでくる。少し、涙目。あ、どうしよう、今すごくキスしたい。しないけど。



「俺も手伝っていい?」「だめ」「何で。そんくらい、俺だってできるよ。怪我しないように気つけるから」「お前の口に入るものを、俺がつくりたいだけ。橘がどうこうってんじゃなくて、俺の我儘。きいてくんないの?」「……きく」



「俺はお前のために眠るんだよ」「うん」「お前のために食べて、お前のために息して。本を読むのも勉強するのも、全部お前のため。佐崎橘、のすることは、全部お前のためなんだ。そういうのって、どうだろ」「重たいな」「それから?」「嬉しいよ」「それから?」「愛してる」



「アラームかけた? 何時?」「6時」「30分早くしない?」「何で」「明日朝ゆっくりしたいから」「起きれんの?」「たっぷり30分かけて起こして?」「ああ、そういう」



「もし俺とお前の生まれたときが違ってたら、俺は今も一人だったのかな」「かわいー女の子が隣にいたかもよ?」「何でそういうこと言うんだよ」「もし、を先に引っ張り出してきたのはお前だ」「そう、だけど」「嘘。ちゃんと抱きしめにいく。お前がお前なら、必ずお前を愛するよ」



「すごい血管はっきりしてんね。採血しやすそう」「あんまべたべたしないで」「え……」「あぁごめん。そういう意味じゃなくて。変な気起こしそうだから」「うわー、ひくわ……」「ひくなよ。年頃なんですー。しかたない」「開き直んなよ!」



「あぁ、そっか、俺お前のこと好きなんだ、ごめん、本当にごめん」
「絶対気づかれないようにするから、好きでいてもいいかな」
背中に頭ごつんして。



「全国民が清く正しく暮らしてて、犯罪なんてない世の中になればいいのにな」「そしたら仕事いかなくていいもんな」「うん」「きりきり働け税金どろぼー」「うわーむかつくー。公僕はせっせと働いてくるので、いってらっしゃいのちゅーしてください」「はいはい」
社会人編。橘くんが警察官。



「そういうお前はどうなんだよ。交通課のおねーさんとよろしくやってんじゃないの?」「はあ? あってあいさつ程度だっつの。あとあの人たちは怖い。まじ怖い」「はは、がんばれー」
社会人編。橘くんが警察官。



「お前炎天下で検問やってから言えよその台詞! 公僕って罵られてみろ!」「え、俺も橘のこといじめたい」「話聞け! 要点外すな!」
社会人編。橘くんが警察官。



「あんまり強くないんだから飲み過ぎるなよ」「大きなお世話! はー、幸せ。佳明は飲まないの?」「アルコールに頼んなくても十分幸せ」「俺がいるから?」「そうに決まってんじゃん」「あーほんと幸せだなー」
大学生編。



「って、なぁ、俺の話聞いてた?」「聞いてた。俺のこと好きだって話だろ」「全然違……いや違わないけど、今は違くて」「うん、好きだ、あとかき氷はなんだかんだでいちごが一番だと思う」「えーレモンだろー」



「冗談でも俺意外に好きなんて言わないで」「いつ俺がそんなこと言ったよ」「言ってないだろうけど、さぁ……。これからのずっとを俺にくれたっていいだろ」「もちろん」



「何これ」「言っとくけどお前が放さなかったんだからな」「それでずっとつないでてくれたんだ?」「だってお前が俺を欲しがるから」「寝てたのに」「無意識ならなおさらだろ」「ありがと。もういいよ」「だめ。もうちょっと」



「佳明にとって、俺って、何」「唯一、かな」「必要とか安心は?」「そういうのもお前だけだから。どうだろ、この答えで満足?」「75点」「手厳しいな」「キスしてくれたら100点にしてやるよ」「うわ、楽勝」



『あ、橘』『う、わ。びっくりした。出るの早い』『ちょうど今かけようとしてたから』『お、すげえ。で、用件は?』『特にないけど』『だと思った。愛してる!』



「うわ、髪べたべたじゃん。拭いてから出てこいよ、風邪ひく」「ばかじゃないから夏風邪はひかない。脱衣所も暑くて長居できねーよー。扇風機つけていい?」「いいけど。タオル貸せよ。拭くから」「いたれりつくせり!」「俺は動物の世話してる気分だよ」



「ずっとそばにいる」「……保険の宣伝?」「よくわかったな」「そういうありきたりな台詞で俺が満足すると思わないでくださーい」「じゃあ言わない方がいい?」「言って。お前の言葉は全部嬉しいんだから」




運命とか奇跡とか、そんな言葉でくくらないでほしい。お前がいて俺がいるっていう、その事実だけ置いておいて。



ただ好きなだけじゃ全然足りない。恋しいも愛しいも全部俺にちょうだい。何だったら憎んでくれてもいい。なぁ、好きだよ、大好き。



あいしてるって言葉で上手に縛れば、お前を全部から切り離すことができるの?



「ちょっと本屋行こうと思うんだけど」「今? 明日の帰りじゃだめ?」「ノートなくなったから」「俺風呂入っちゃったよ。汗かきたくない」「もっかいシャワー浴びればいいじゃん。行くの行かないの」「行く」



「他に好きな人ができた」「……」「・・…」「じゃ、帰る。うちにあるお前のものどうする?」「……よし、あき?」「何」「佳明……!」「だから何?」「……っ。ごめん、嘘、嘘だから……っ」「だよな」「わかってんならさぁ……!」「うん、ごめん。泣きそう?」「死にそう」「ごめんな」



「かわいいかわいいって、そんなこと言われて俺が喜ぶとでも思ってんの?」「かわいいと思うから言ってるだけで、別に喜ばせようとか思ってない。かっこいいとも思ってるし、好きだとも思ってるし、毎日めいっぱい愛しいよ?」「お前ってつくづく恥ずかしいやつ…あぁもう好きだ!」



「体育大会の応援合戦で女装することになった」「まじ!? 何着んの」「チアみたいなの。女子は学ラン」「うわ定番、ご愁傷さま。でも見せてね」「いいけど汚すなよ」「汚すようなことすんの?」「っ! 死にさらせっ!」



「お前のことわかり過ぎてつらいよ。なぁ、俺のこと好きでいてくれてるんだろ。どうしようもないくらい。それ、すごく苦しいんだろ。それがわかるから俺も苦しいよ」



「佳明、寝ちゃった?」「まだ起きてる」「はは、よかった」「何で?」「知るか。何となく?」「質問に疑問形で返すな」「ごめん。ちょっと声が聞きたくなっただけ」「……橘」「うん、ありがとな」



「今日うち誰もいないんだー」「いつもじゃん」「朝までいない」「それもいつもじゃん」「お盛んな高校生だってのに、スリルとイベントに欠けるね?」「誘ってんの?」「いや別に」



ありふれた人間、ありふれた人生のうちのひとつでしかない俺のこと、お前の特別にしてくれてありがとう。



「普通って、何だろうな」「普通?」「うん。普通の幸せ、普通の考えって、何」「どうかした? 何かあった?」「父さんと、ちょっと」「……珍しいね。俺のことだろ」「……そう、だな」「なぁでも、俺、お前のこと好きだよ。ごめん。好き」「謝るなよ、お互い様だろ」
もしもいろいろ露呈したら。



偏った愛情で強くなった振りをするくらいなら、弱いままでいればいい。全部をあげる、俺に沈んで、一人じゃいられないように。



「愛してるって言われるたびに、重たくなってく気がする」「愛してる」「うわ」「愛してるよ佳明?」「わざとだったわけね」「もちろん。俺ね、お前のこと縛りたくてたまんないの。離したくないの。そのためなら重しでも鎖でも何だって使う」



「もののけ姫って最後どうなるんだっけ?」「黙れ小僧?」「それラスト?」「違うと思うけどそれしか覚えてない。姫ねえさま?」「違うやつじゃね?」「見ればいいじゃん」「それもそうだ」



「橘腹減らない?」「いや別に。何かつくんの? こんな時間に?」「うどん茹でようかなって。ざるうどん。食わない?」「食わない。お前余計な肉ついたら困んじゃないの?」「こんくらい平気だろ、たぶん」「ふーん」「ってか、寝れば?」「せっかく朝練習ないのに、橘いんのに。寝ろって?」「それ俺にも起きてろってこと? そろそろ眠いんだけど」「いいよ、寝顔見てるから」「あ、そう」



「今から行ってもいい?」「いいけど、せっかく帰ったのにめんどくねえの」「思い立って部屋の片づけしたんだけど、途中で飽きて、寝るとこないんだよ」「わかった。俺もう寝るから。鍵開けとくからなるべく早く来て」「ん、ありがと」



五十音であいを語るよ。それじゃあとても足りないって、わかってはいるけれど、それだけしかもたないから。



May

「キスしたい」「すれば」「路上ですけど」「人気ないし」「せめて物陰」「じゃあこっち」「なぁ屈んで」「言い出しといて注文多いね」「はい、黙る」「りょーかい」



「アイス買いに行こうぜ!」「帰りに食ったじゃん」「さっきはさっき、今は今。スーパーカップ食いたい。なぁなぁ!」「暑いから嫌」「じゃあちょっと行ってくるから鍵貸して」「こんな夜更けに外出すと思ってんの? はい、おいで」



「橘起きろよ」「起きた」「起きてないじゃん、せめて目開けろよ」「起きてんだって」「明らか起きてないだろ」「それは佳明の目が節穴なんだよ」「なぁあほ言ってると置いてくぞ」「それはやだ」「起きれんじゃん……」



「お前がいないと生きてけないようになりたい」「もうとっくにそうだろ」「もっと。いっそ離れたら心臓が止まるくらい。そしたらずっとそばにいさせてくれるだろ」「そうじゃなくてもそばにいたいって思ってるよ。いいから補習行けよ。俺は休みなんですー」「あああ、行きたくねーよー」



「佳明、寝るならベッド行って」「んー……」「服そのままでもいいから、ここでは寝ないで」「ん……」「佳明」「……」「キスするぞー」「むしろして」「起きてんじゃねえか」「うわ騙された」「あほか。ていうか俺があほか」「照れてんの」「ってない!」



深く深く貪って、そのまま呼吸さえ失って息絶えてしまいたい。今なら死んでもいい、って、お前も思ってくれてたら、いいのに。



「お前って夏でも涼しい顔してるよなぁ。暑くねえの?」「私汗腺ないのよ」「え…!まじで!?」「何信じてんのよばかじゃないの。ああそうね、ばかなんじゃなくて阿賀左なのよね?」 阿賀左くんと茉莉ちゃん 。



「私何があってもあんたとだけは結婚しないわ」「こっちから願い下げだ!」「阿賀左茉莉って、すっごい字面悪いわよね? あ、それに、想像しただけで気分悪くなってきたわ…」「話聞けよ。あとお前ほんと鬼だな」
阿賀左くんと茉莉ちゃん。



「……何してんの」「肩こってつらいって言ったらねー。橘くん上手だね」「橘、疲れたろ、替わるよ」「え別に」「橘」「う、ん」「父人気だなー。……って、痛い痛い!佳明くん!?」



「橘くんいい子だなー。うちの息子は最近冷たいもんな。父は寂しい。橘くんうちの子になればいいのになー」「じゃあ嫁にもらっていい?」「えっ」
佳明くんと保明さん。



「今日はリードしてくれるんだ?」「勘違いすんなよ、いつでも主導権は俺にあんの」「ふーん?」「っ、何だよっ」



「おはよう赤倉。あんた今日も幸せそうね」「おはよ。はぁ、おかげさまで?」「嫌味よ」「そんくらいわかるよ」「あんたが買うキャベツ全部に芋虫入ってればいいのに…」「ごめん今のはちょっとわかんなかった」
佳明くんと茉莉ちゃん。



「佳明、お前俺の名前漢字で書ける?」「書けるよ。きへんに、こうだろ?」「おー、あってる」「お前のことだから。疑うなよ」「お父さんがお前に名前覚えられてなかったって嘆いてたから」「何俺のいないとこで話してんの」「そこに食い付くのかよ」



「橘あんまり家の話とかしないね?」「そうか?」「俺お前の母さんのこととか、全然知らない」「そういえば、そうかも。……忙しくて、隙のない人なんだよ」「……橘、おいで」「うん」



「何で佳明はこんなに俺のこと甘やかしてくれんの」「自覚あったんだ」「ちゃかすな」「ごめん。俺はお前を大事にしたいの。そんでだめにしたいんだろうな。橘が一人で生きてけないように」「策士じゃん」「軽蔑した?」「褒めたんだよ」



「もしお前が俺のこと嫌いだっつったら、たぶん俺も俺のこと好きじゃなくなると思う」「成り立たない仮定で話すんなよ」「ん…わかってる、けど」「けど、もだめ。はい、味見」「ん」「元気出た?」「これじゃ足りない」「今火使ってるからあとで」「今」「ほんとお前暴君ね」「でも好きなんだろ」



『今何してた?』『お前のこと考えてた』『そういうのはいいから。明日テストだっつってなかった?』『教科書お前んちだもん』『はあ!? 今から持ってくからノートでも見とけよ!』『あ、たぶんノートも』『何なの、お前ばかなの。あ、ごめん、ばかだったわ』『自己完結しないでください!』



「別に日本語話せれば不自由しなくね?」「お前はときどき日本語も怪しいだろ! 将来どこの国で暮らす気だよ!」「あー……オランダとか? そしたら橘と合法的に夫婦になれるし」「そういう法的なあれはいらないんで。佳明がいればそれでいいので」



「何で陸上だったわけ。お前わりと何でも得意だろ。ばかな代わりに運動はできるもんな」「ばかっていうな。今回は英語しか赤点取ってない」「は!? お前英語赤点だったの!? あんなに教えてやったのに!?」「あ。やべ」「やべ、じゃねえよ! 俺の時間と労力を返せ……!」



「お前の一番になりたい、と、お前の唯一になりたい、だったら、どっちがいっそうわがままだと思う?」「とっくの昔に両方お前にあげてんだから、そんなことで悩むなよ」



俺が見たくないものじゃなくて、お前が見せたくないものだろ、いいよ盲目でいてあげる。



「待て橘だめ!」「何で」「絶対指切るから。貸して」「お前俺のことばかにして楽しい?」「ばかにしてない。大事にしてるだけ。はい貸して」「ん」



「風強いなー。飛ばされそう」「手つなぐ?」「ばっか、冗談じゃん。でもつなぐ」「わかってるって。はい」「ん」



「暑い。アイス買って帰ろうぜー。クッキーサンド食べたい」「暑いって言うくせにクッキーサンドかよ」「悪い?」「ぱさぱさしない?」「する。するけど食べたい」



「あ、これ、いいな」「え、お前ならこっちじゃないの」「んーん、佳明に」



「どこ行くの」「お前の笑顔を100円で買いに行こうかと」「…ミスド?」「うん」「俺も行く!」



「何にすんの」「オールドファッション、チョコの! あ、でも、ココナッツのやつも好きなんだよなー。決めらんないよなー」「女子か」「きゃー、決められないよどうしよぉ」「それかわいいと思ってやってんの」「いやあんまり」



「猫飼いたいなー」「ふぅん」「佳明は? 動物飼うんだったら何?」「もう飼ってるからいいや」「言っとくけど俺がご主人様だからな?」「誰もお前のことだなんて言ってませんけど?」「……にゃあん」「あーくそ、かわいいなお前!」



「もし佳明がいなくなっても探さない。絶対に探さないから、いなくなんないで。俺がいないとだめなのは、お前だって同じだろ」



「橘はいつも自分と自分を天秤にかけて俺を脅しにかかる」「だめか? 俺のことうっとうしいって思う?」「いいよ。お前の何もかもを好きでいるってとっくに腹くくってんだから。むしろ嬉しい」「嬉しいとか言われるとそれはそれで複雑」



「ごめんって、本当にごめん。見せて」「……舐めるだろ」「う」「はい図星! もうやだまじ痛え! 寄んな!」 深爪



「佳明はいつから俺のこと好きだって思った?」「知るかよ。今日から、って線引きできるもんじゃないだろ。お前だってそうじゃねえの?」「俺は毎日お前のこと好きだって思ってるから。惚れ直してるから」「……それ反則。ずるいだろ」「うん、わかって言った」



「お前が俺に思うのとまったく同じように、俺がお前のこと好きって思うんだったらいいのになぁ」「どういうこと」「なんか、お前の言う『好き』に俺の『好き』は叶わない気がするから」「愛が重いって?」「いや別に重くはないけど。バランスの問題?」「ふーん」



「佳明」「おー」「佳明」「? うん」「佳明ー」「何だよ」「……俺さ、お前のこと好きだよ」「俺もお前のこと好きだよ?」「それ以上に好きになりたい」「それは無理だと思う」



「何借りる?」「あ、俺、スカイ・クロラ見たい」「どんな話?」「子供のまま成長しない戦闘機乗りの話?」「面白いのそれ」「見たことないからわかんねえ」「ですよねー」



「裏切る、ってどういうこと」「何が浮気かってこと?」「いや、違くて。気持ちも体も残したまま、それでも裏切るって、どんなときだろ、って」「……俺は、橘が俺なしでも平気になったら、裏切られたって思うだろうな」「好きでも?」「好きでも、愛してても。たぶんだめだ」



「いつまでだってお前を愛してたいよ。でもときどき、憎んでみたくもなる」「いいよ?」「いいの?」「お前がくれるものは何だって愛しくてたまんない」



「俺女の子嫌いになりそー」「何で」「女だってだけで、お前を好きでいていいと思ってるとことか、もしかしたらって期待するとことか。ずるい。俺がお前を好きでいることより、そういう気持ちが正しいみたいなのも嫌」「でもお前には俺がいるじゃん」



「引かれたくなくて、あんまり言えないけど、俺だって、佳明が俺の知らないところで呼吸してんのさえ嫌だって……そんくらい考えるよ」



「今日の夕飯何?」「カレーかな」「普通のカレー?」「普通で悪かったな。お前の母さんみたいな凝ったのは無理」「俺母さんのカレーあんまり好きじゃない」「へぇ?」「給食のカレーみたいな、やぼったいカレーが好き」「……じゃあとことんやぼったいのにしようなー」「ん」



「なぁなぁ、じゃがいも切っていい?」「指切るからだめ」「じゃあ人参の皮むき」「肉削ぐからもっとだめ」



「もし明日世界が終わるとしたら?」「お前を抱き締めたい」「俺を殺したいって言われるかと思った」「それは明日にとっとく」「うげ」「橘に殺されんのも捨て難いな」「物騒な悩みだな」「あ、わかった、心中しよう」「お前今すげえ名案みたいな言い方したけど、なんっの解決にもなってないからな!」「嘘。少しでも長くお前といたい」「ばーか。はじめっからそう言えばいいんだよ」



「橘」「んー」「橘ー」「うん」「橘」「だから何」「何度だって呼びたい」「好きにすれば」



「橘、シャツのボタン、わざと?」「え?」「かけ違えてる」「あ、間違えた」「…ん」「ありがとー」「…」「…そこで手を止めるな!」



「お前は何なの、俺のかーさんなの」「嫌? 構われんの、迷惑?」「ではないけど」「俺はお前の親友で恋人で、父親で子供で兄貴で…とにかくお前の全部になりたい」「妻と夫も入れていい?」「いいよ」「妾と愛人も」「お前こそ俺の何になりたいの」



「俺のこと好きになってほしいって、言ったけど、あれ、嘘だった。別にお前が俺のこと好きじゃなくても、俺が勝手に好きでいるだけだから」



「もうお前とは友達には戻れないよ」「戻らなきゃいいだろ」「いつまでそんなこと言ってくれんの」「いつまででも。お前がもうやめたいって言っても」



「う、わっ」「え?」「…」「もしかして橘、首弱い?」「寄、るな。触んな…こっちくんなって…!」「弱いんだ?」「笑ってんじゃねえよ! ちょ、まじで、やめ、ひっ」



「痛っ。佳明、痛いって」「ごめん」「思ってないくせに! 好きだから、って言えば何でも許されると思うなよ」「でも許してくれるんだろ」「それは……そうだけど」



「眠い。もうだめ。起きてらんない」「じゃあ寝ろよ」「佳明はまだ寝ないんだろ」「わかった、寝るから」「早くー」



「おはようからおやすみまで」「ライオン?」「んーん、幸せってこと」



「会いたくない人っている?」「お前かな……」「え」「俺を嫌いになったお前には会いたくないな」「杞憂だな」「杞憂って何だっけ」「台無しだよお前!」



「お前目薬点すの下手だな」「うまく狙えねえんだよなぁ」「貸して」「うん」



(電話で)『……橘』『うん』『何』『寝落ちてる頃じゃないかと思ってかけた。お前まだ着替えてすらないだろ』『あー……うん、よくわかったな。ありがと、助かった』『じゃあ切るけど、風呂入ってから寝ろよ?』『あ、待って切らないで』『もっと俺の声を聞いてたい?』『そういうこと』



「今日部活してるとき、だるそうだったな」「ちょっと不調気味。よくわかったな」「天文部と相部屋でさー」「……」「……冗談だからな?」「だよなー」「それはさておきマネジ美人だな?」「冗談なんだよな!?」
書道部の部室は旧地学室。天文部と相部屋。



「今日調理実習だった」「まじで。お土産は?」「その場で試食」「じゃあお前が料理したの、誰か食ったってこと?」「うん」「……魚傷んでればいいのになぁ!」「それ俺もアウトなんだけど」「背に腹はかえらんないだろ」



「お前化学得意なの」「まぁ、好き」「何で」「料理好きだから?」「関係あんの?」「化学は台所で生まれたっていうじゃん」「佳明がそういう言い回し使うと、あってんのか疑わしくてしかたないんだけど」



「イマジナリーコンパニオンって知ってる?」「空想上の友達?」「そう。俺たち、お互いがお互いのそれだったらどうしよう」「ほんとはいないってこと? どこにも?」「そう」「別にいいじゃん。どっちにしたって、俺はお前なしじゃ、だめなわけだし」



「赤倉って彼女いんの」「いる」「ふーん……どんな子?」「すげえかわいい。絶対手放したくない」「!? あ、へ、へーえぇ……」「何だよ」「いや、お前そんなキャラだと思わなかったっつーか、そっか…うん」

「そういや今日、彼女いるかって聞かれて、普通にうんって言ったわ」「おいこら」「まさか彼氏ですとは言えないし、お前が男とか女とか、どうでもいいし」「俺愛されてますね」「今更ですね」

「ちょっと待った。やっぱ次からいないっつって」「何で。それで絡まれんの面倒だし、前にそれでお前嫌がったじゃん」「どこぞの誰かにお前が女の子と付き合ってるとこ想像されんの、すっげー腹立つ」



「俺この歌嫌い。今頃気づいた、って、その程度ってことだろ」「早い遅いは関係なくね」「手遅れっていうのはさ、相手にしてみたら何事もないのと同じだろ。それを世界最大の不幸みたいに言うのは、お門違いだと思う」「厳しいな」「だって向けられた気持ちに気がつけない方がずっと不幸だ」



「なんで噛むの」「だめ?」「これとこれ、あとここも。お前がつけたやつ」「それだけ? 案外すぐに消えるよな。あぁ、痛かったらごめんな、やめないけど」「別にいいけど。だからなんで噛むんだよ」「……聞きてえの?」
絶対ひくから、聞かない方がいいよ。



「なーなー、何かお揃いにしようぜー」「目の数も内臓の数も一緒。ほら、お揃い」「……」「……」「……」「……ごめん」「……帰る!」「本当に悪かった! なぁごめんって! ちょ、待てよ、許してください!」



「好きって10回言って」「言わせたいだけだろ」「そうだけど何?」



「シルクって10回言ってみて」「シルクシルクシルクシルクシルクシルクシルクシルクシルクシルク」「牛が飲むのは?」「? 水だろ」「つまんない佳明のくせに!」「今日こそ言うけど、お前俺を何だと思ってんの」



「俺は俺のものだよ」「うん」「でもそれ以上にお前のものでもある」「うん。だから大事にしろよ」「わかった」



「俺の一番の親孝行は、母さんの知らないところで生きていけるようになることなんだろうな、って」



「お前本読むんだ……」「あぁ、好き、だけど」「少年少女名作劇場で止まってんのかと思ってた」「あのな、俺でも傷つくことくらいあるんだからな」



「手伝ってくれたのは、まぁ、ありがと。でもまだ勝手にノート見られたのとは釣り合わないと思うんだよな。お釣りよこせよ」「何しろって?」「お前の名前。俺ばっかり知らない。教えろよ」



「見て見ぬ振りすればよかったじゃん。学校だって違うし、俺のお前に対する心象よくする必要なんて、ないだろ」「そうか?」「そうだよ。ノートだって、いくら俺がお前にむかついてたって、それだけの話だろ。お前にはもう関係ないことだったのに」「あー……またノート借りたかったから?」「そこまで図々しいと腹立てんのもあほらしいな……」



駐輪場で大規模ドミノ引き起こしちゃう橘くんを見かける佳明くん。「ノートのこと許してくれるなら手伝うけど」



(荷物ひっくり返した数日後)「佐崎橘」「……は」「違った? お前佐崎橘っていうんだろ」「そうだけど……」「ノート」「え……あぁ!」
荷物をひっくり返して、ノートがまぎれこんじゃったのが出会ったきっかけ、だと、どうだろう、と。

「あんた字ぃきれーだね」「は?」「書きこみ多いし、優等生?」「え、いや、おい。見たわけ?」「昨日テストでさー。……ありがとうございました?」「てめぇ……!」



「夜中に電話して、ごめん。寝てた、よな?」「いーよ、お前なら。どうした?」「朝までそばにいてくんない?」「しかたないやつ」「実は今下にいるんだけど……」「ほんとしかたないやつ。早く上がってこいよ」



「世間に後ろ指さされるより、お前を失くす方がずっとこわいよ」「世間って、たぶんお前が思ってるよりずっとこわいよ」「それでも」



I love you.を佳明風に訳すと『おまえの事を考えてたらいつの間にか夜が明けてた』です。



「次怪我したら罰ゲームな」「何すんの」「俺がひとつ傷つける」「傷……」「うん、たぶん想像したのであってる。大丈夫絶対見えないとこにするから」「お前ほんとえろいよな!」「どういたしまして」



「何でそう生傷耐えないわけ」「知らん」「それ今日、こっちは一昨日」「詳しいな」「お前のことだから」



「俺たちに子供はできないから、幸せにならなくてもいいんだ。よかったね」
しあわせかぞくけいかく。



「俺のことどれくらい好き?」「いつかお前のことを嫌いになるくらいなら、その前に死んじゃいたいくらい?」「30点」「えー……」



「じゃあ逆に聞くけど。俺が来てっつったら、お前は来んの?」「俺が一緒にいる限り、そんな日は来ないだろ」「そうかもな」



「俺が真冬の夜中に電話して、すぐ来てっつったら、来てくれんの。雨でも雪でも?」「呼びたくなるようなときには、全部そばにいる」「……っ。佳明のあほ……」 



「興奮し過ぎて頭がんがんする」



「お前の父さんにあなたの息子さん彼氏いますけどってばらすよ!?」「いいけど」「男に欲情するヘンタイですって」「だってお前かわいいし。好きだし。しかたなくね?」「くっそ愛してる」「俺も」



「橘タオルもう一枚……」「何してんの」「カランとシャワー間違えた……」「ほんと何してんの……」

「……っていうこともあったよなー」「なつかしーなー」「お前んち慣れてなくて。うちと逆だったから。今は自分んちで間違えるからな」「それもどうよ」


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(クラスメイトと)「それ、怪我、どうしたん?」「あー……躾のなってない犬がいて」「佐崎んち犬飼ってんの?」「いや、うちの犬じゃないんだけどねー……」



(ファミリーパック購入)→「きのこばっかり食うなよ」「そういうお前もたけのこ手ぇつけてないだろ」「いやだって俺きのこ派だし」「俺もだよ」「じゃあなんでファミリーパック買うんだよ!」「買ったのお前ですけど!」
二人ともきのこ派。



「いた……」「逆さ睫毛!? よーし抜いてやるからそこ座れよ!」「何でお前そんな活き活きしてんの」



(わかりあえない場合)「たけのこだろ! きのこってなんかぱさぱさしてんじゃん!」「わかってないお前ほんとわかってないよ……。たけのこ食べるとき手にチョコつくじゃん、食べづらいじゃん」(まぁどっちもおいしいよね……それぞれの好みだよね、っていう一応の意見の一致を得る)「そもそも俺パイの実派なんだけど」「おいてめぇ」
どちらかがたけのこ派で、どちらがかきのこ派だったら。



「お前は俺のものだ」「突然何」「恋人に言われたい台詞ランキング。きゅんとした?」「どっちかっていうとむらっとした」「引くわー……」



「次のテスト、平均より悪かったら罰ゲームな」「いーよ、何する?」「橘に夕飯つくってもらう」「それは俺にとっての罰ゲームなの、お前にとっての罰ゲームなの」「あー…両方?」「意味ねえじゃん」



「佳明、よしあき……っ!」「あれ起きたの」「おっ前、何で部屋にいないの!」「目ぇ覚めたから朝飯つくろうと思って。食うだろ」「早過ぎだろ、じいさんかよ…4時だぜ。食う」「今? あっためなおせばいいし、寝てれば」「ここにいる」



「何すんだよ。首いてぇ」「ごめん」「したいならしたいって言えよ」「お前聞いても怒るじゃん」
振り向きざまに唇を奪う。



「俺以外の誰かが佳明のこと好きだってだけでもむかつく。刺青とか彫ればいいのに。あぁでもそんなの俺もやだな」「お前一人で何言ってんの」



(メール)『(・ω・)ノシ』『何なの』『かわいくね?』『お前俺にかわいこぶってどうすんの』『それもそうだ』



「昔の遊女ってさ、惚れた男のために指切ったんだって」「包丁もってるこのタイミングで言うな」「わざとです」「だろうな」



橘くんの「ずっと一緒にいような」は「お前がいないと生きてけないからどこにも行くな」というちょっと脅迫めいた願望。



「佳明、佳明」「んー」「問題」「難しい?」「わりと?」「パス」
ぐだぐだとテスト勉強。



「もうお前のこと好きでいんのやめる」「好きにすれば。それでも俺はお前が好きだし、離れてなんかやんないけど? お前が俺のせいでおかしくなってんの、すげえぞくぞくするし」「変態」「変態でいいよ」「佳明のくせに」「俺ですけど」「やっぱ好き」「だろ」



「チョコくんないの」「は」「2月14日。俺ら付き合ってる。な?」「何で俺だけがやんなきゃいけないの」「だってお前が女役じゃん」「今軽く殺意抱いたわ」



「明日朝練あんの?」「ある、7時過ぎから。帰りに鍵渡してくれればいいから、寝てれば?」「俺も起きる。起こして」「りょーかい」 



「料理しよう。大丈夫、日本人はカレーなら失敗しねえから」「いらない。できなくていい」「あとから困るだろ」「佳明がいるから困んねえよ。俺にできること増えたら、お前がいなくても平気になるみたいでやだ」「とか言いつつお前面倒なだけだろ」「最近知恵ついたよな……。あと、全く口からでまかせってわけでもないんだけど」「わかってるよ」「ならいいけど」



「はぁ!? うっぜぇ、消えろばか!」「……」「……」「……」「今のは言い過ぎだよな、さすがに」「あ……うん、ごめん。でもうぜぇは取り消さない」「だと思った」



「べつにお前じゃなくてもよかったんだよ」「うん」「俺を一番にしてくれるなら、たぶん誰でも」「うん。でも今は俺じゃないとだめだろ?」「……むかつく」



「きらわれたらどうしよう」



「今日さ、女の子俺のとこきたんだけど。お前のこと聞かれたんだけど」「あー……うん、ごめん」「わっざわざ違う学校の俺んとこきてあれこれ聞く度胸があんだったらさぁ、さっさとお前に告白しろよな!」「それは困る」「何で」「だって俺お前のこと好きじゃん」「それは今おいとけよ」「おいとくなよ」



「嫁にこれば」「字面が悪くなるからやだ。お前がこいよ」



「お金払ってまでどこの誰がつくったかわかんないもの食いたくない。佳明がつくって」



「だってお前、俺のこと好きじゃん」「え、あ、うん」「だったら俺だってお前が好きだよ」
告白劇の可能性のひとつ。



「まずかったら怒るよ」「いや、人並みには料理できると思うけど……」「母さん料理教室の先生だから。俺舌肥えてるよ」「げ、ハードル高過ぎ。あ、それ待てって」「もういんじゃね?」「まだだろ……見たとこ生だろ……」



「すっげー埃っぽい、髪ざらざらだし、汗の匂いするし」
でもくっついて離れない。



「付き合う、ってことは、理由がなくても触っていいんだろ?」



「今の俺の大事なものは、全部お前がもってんの」



ことりは【2年M組で部活は書道部。制服は茶色の学ラン、髪は灰、目は猫目。女々しい性格で、現在同性が気になる】な男子高校生です。
すべてのはじまり。診断メーカーで出たことりくん(仮)。